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公開日:2025.06.02
フェーズフリーで実現する、しなやかで安心な未来
「フェーズフリー」という言葉をご存知ですか?これは、普段使っているモノが、災害などの非常時にも役立つという新しい防災の考え方です。特別な準備は必要ありません。いつもの暮らしの延長で、無理なく「もしも」に備えることができます。
この記事では、無駄なく経済的で、日々の生活も豊かになるフェーズフリーのメリットや、具体的なアイテムの選び方を分かりやすく解説します。あなたも、しなやかで安心な未来への一歩を踏み出してみませんか?
目次:
フェーズフリーの基本
私たちの生活は、普段の穏やかな「平常時」と、災害などが発生した際の「非常時」という、大きく分けて2つのフェーズが存在すると考えられてきました。従来の防災は、この「非常時」に特化した備えを、「日常時」とは別に準備するという考え方が一般的でした。
「フェーズフリー」は、この日常時と非常時という2つのフェーズの間に存在する垣根を取り払い、どちらのフェーズにおいても有用な製品やサービス、考え方を重視するアプローチです。
フェーズフリーの定義と誕生背景
「フェーズフリー」という言葉は、一般社団法人フェーズフリー協会によって定義されました。その定義は、「身のまわりにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立てることができるという考え方」とされています。
この概念が生まれた背景には、従来の防災が抱えていた様々な課題がありました。「防災のため」という特別な準備は、心理的なハードルが高く、なかなか行動に移せない人も少なくありませんでした。フェーズフリーは、そうした従来の防災の課題を解決し、誰もが無理なく、普段の生活の中で自然に備えを実践できる社会を目指して提案されました。
フェーズフリーが実現する5つの大きなメリット
フェーズフリーの考え方を私たちの生活や社会に取り入れることには、多くの具体的なメリットがあります。フェーズフリーがもたらす主要な5つのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
無駄なく経済的
フェーズフリーの最大のメリットの一つは、経済的で無駄がない点です。これは特に「ローリングストック法」の実践と深く関わっています。ローリングストックとは、普段から使う食料品や日用品を少し多めに (例えば1週間分など) ストックしておき、消費した分だけを買い足していく方法です。
フェーズフリーの考え方では、このストックするアイテム自体が「日常使いのもの」であるため、特別な「非常食」を別途購入する必要がありません。普段食べているレトルトカレーや缶詰、パスタ、飲料水など。これにより、「いざという時のために買ったけど、結局使わずに賞味期限が切れて捨ててしまった」といった食品ロスを防ぐことができます。トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ウェットティッシュ、カセットボンベなど、様々な消耗品や日用品にも応用可能です。常に一定量を備蓄しつつ、普段の生活の中で消費・買い足していくため、無駄な出費を抑え、家計にも優しい備え方が実現します。
安心感とストレス軽減
災害発生時、私たちは普段経験したことのないような強い不安やストレスに晒されます。そんな時、物理的な問題を解決するだけでなく、「いつもと同じ」という感覚が、非常時の不安を和らげ、心理的な安定をもたらしてくれる効果があります。使い慣れたモノが側にあるという安心感は、困難な状況を乗り越えるための重要な支えとなるのです。
防災のハードルを下げる
「防災」という言葉には、どこか「特別な準備が必要」「大変そう」「何から始めればいいか分からない」といった、高いハードルのイメージがつきまといます。しかし、フェーズフリーは、防災に対する心理的な障壁を大きく下げます。
なぜなら、それは「特別な準備」ではなく、「いつもの暮らしの延長線上にある備え」だからです。「このレトルト食品、美味しいし、賞味期限も長いから少し多めに買っておこうかな」といった具合に、普段の買い物の中で自然に取り入れられます。この手軽さと自然さが、これまで防災に関心が薄かった層や、これまでなかなか時間が取れなかった人々をも巻き込み、社会全体の防災意識の底上げに繋がる可能性を秘めています。
日常生活の質の向上
フェーズフリーの魅力は、防災面だけに留まりません。フェーズフリーなアイテムは、非常時にも役立つという付加価値を持ちながら、日常をより豊かに、楽しくしてくれるアイテムとしても魅力的です。例えば、デザイン性の高いLEDランタンは、普段はおしゃれな間接照明として使い、停電時には頼れる明かりになります。防災のためだけに購入するのではなく、普段の生活を向上させるために選んだものが、結果的に防災にも役立ちます。
社会全体のレジリエンス向上
フェーズフリーの考え方が個人レベルで浸透し、実践される人が増えることは、最終的には地域社会、ひいては国全体の災害に対するレジリエンス (回復力) の向上に大きく貢献します。レジリエンスとは、災害などの予期せぬ事態が発生した際に、被害を最小限に抑え、そこから迅速に回復し、さらに将来の同様の状況により良く適応していく能力のことです。
日常の延長線上で無理なく備えを実践できるフェーズフリーの考え方は、社会全体の防災力の底上げにつながります。特別な知識やスキルがなくても、誰もが「自分ごと」として備えに参加しやすいため、災害発生時の初期対応能力や、その後の生活再建プロセスがよりスムーズになることが期待されます。また、企業がフェーズフリーな商品やサービスを開発・提供することも、社会インフラとしてのレジリエンスを高める重要な要素です。
フェーズフリーなアイテムの探し方・選び方
フェーズフリーの概念やメリットが理解できたところで、次に具体的にフェーズフリーなアイテムの探し方や選び方を紹介します。フェーズフリーなアイテムは、実は私たちの身の回りにたくさん存在します。
【食料・飲料】
アイテム | 説明 |
---|---|
缶詰 | サバ缶、ツナ缶、焼き鳥缶、コーン缶、フルーツ缶など。普段の食事やおつまみに。タンパク質や野菜を手軽に摂取できます。プルトップ式のものが便利。 |
レトルト食品 | カレー、パスタソース、スープ、おかゆ、丼ものなど。温めるだけで食べられる手軽さが魅力。湯煎だけでなく、レンジ対応のものも増えています。 |
パックごはん | 電子レンジや湯煎で温められるもの。長期保存可能なアルファ米も選択肢に。 |
乾麺 | パスタ、うどん、そば、そうめんなど。比較的安価で長期保存が可能。カセットコンロがあれば調理できます。 |
フリーズドライ食品 | 味噌汁、スープ、雑炊、リゾットなど。軽くてかさばらず、お湯を注ぐだけで本格的な味が楽しめます。 |
栄養補助食品・お菓子 | 栄養調整食品 (カロリーメイトなど) 、栄養バー、羊羹、チョコレート、飴、ナッツ、ドライフルーツなど。手軽なエネルギー補給や気分転換に。 |
飲料水 | ペットボトルのミネラルウォーターやお茶。1人1日3Lを目安に最低3日分、できれば1週間分を備蓄。ウォーターサーバーも日常・非常時に役立ちます。 |
調味料 | 小分けの醤油、塩、砂糖、油など。味付けの変化は食欲維持に繋がります。 |
【エネルギー・電気】
アイテム | 説明 |
---|---|
モバイルバッテリー | スマートフォン、タブレット等の充電に必須。日常的に持ち歩く容量のものに加え、大容量タイプもあると安心。ソーラー充電機能付きも便利。 |
ポータブル電源 | キャンプや車中泊で人気。停電時に家電 (照明、扇風機、ノートPC、小型冷蔵庫など) を一時的に使用可能に。容量 (Wh) 、出力 (W) を確認して選びましょう。 |
ソーラーパネル | ポータブル電源を充電できます。折りたたみ式など携帯しやすいものも。 |
LEDランタン・ライト | 省エネで長寿命。電池式、充電式、手回し充電式、ソーラー充電式など多彩。ヘッドライトは両手が使えて便利。 |
ラジオ | 災害情報の入手に重要。手回し充電やUSB充電、乾電池対応など、複数の電源方式があると安心。スマホ充電機能付きも。 |
カセットコンロ・カセットボンベ | 非常時でも調理や湯沸かしが可能。屋内で使用する際は換気に十分注意。ボンベは使用期限を確認し、目安として1週間分 (6~9本程度) を備蓄します。 |
【衛生・健康】
アイテム | 説明 |
---|---|
ウェットティッシュ・からだ拭きシート | 断水時に入浴できなくても体を清潔に保てます。ノンアルコールタイプは肌が弱い人や赤ちゃんにも。 |
アルコール消毒液・ジェル | 手指消毒に。ポンプ式、携帯用など。 |
マスク | 感染症対策、防寒、粉塵対策に。個包装が衛生的。 |
携帯トイレ・簡易トイレ | 断水時のトイレ問題を解決します。凝固剤と処理袋がセットになったものが便利。最低3日分、できれば1週間分を目安に備えましょう。 |
トイレットペーパー・ティッシュペーパー | 日常のストックを多めに。芯なしタイプは省スペース。 |
常備薬・衛生用品 | 持病の薬、解熱鎮痛剤、胃腸薬、絆創膏、消毒薬、包帯、ガーゼなど。生理用品、おりものシート、おむつ (大人用・子ども用) も忘れずに。 |
歯ブラシ・歯磨き粉 (またはマウスウォッシュ) | 口腔ケアは感染症予防にも繋がります。水が少ない状況でも使える液体歯磨きや歯磨きシートが便利です。 |
【生活用品・その他】
アイテム | 説明 |
---|---|
アウトドア用品 | テント、寝袋、マットは避難所や車中泊でのプライバシー確保や快適性向上に役立ちます。多機能ナイフ、ロープ、軍手なども役立ちます。 |
ラップ・アルミホイル・ポリ袋 | 食品保存、食器代わり (皿に敷く) 、調理 (ポリ袋調理) 、保温 (体に巻く) 、防水、ゴミ袋など、用途は多様。高密度ポリエチレンのポリ袋は調理にも使いやすい。 |
多機能家具 | 収納付きベンチ (普段は収納、非常時は避難先での休憩場所) 、折りたたみテーブル・椅子など。 |
衣類・履物 | 動きやすい服 (ジャージ、パーカーなど) 、下着、靴下、防寒着 (フリース、ダウン、カイロ) 、雨具 (レインコート、ポンチョ) 。靴は履き慣れたスニーカーが基本。 |
情報収集ツール | スマートフォンの充電確保に加え、地域の防災アプリ、ハザードマップ (紙でも) 、公衆電話の場所などを把握しておく。 |
貴重品・重要書類のコピー | 現金 (小銭も) 、身分証明書、保険証、銀行口座情報、お薬手帳などのコピーやデータを防水ケースに入れて保管しておきましょう。 |
「もしも」の視点をプラス
フェーズフリーなアイテムを選ぶ際には、日常的な使いやすさやデザインに加えて、いくつかの「もしも」の視点をプラスして検討することが大切です。これにより、いざという時に本当に役立つアイテムを選ぶことができます。
耐久性
日常的に使用し、かつ非常時の過酷な状況にも耐えられる丈夫さがあるか。例えば、アウトドアブランドの衣類やリュックは、普段使いでもおしゃれで、かつ耐久性や機能性に優れていることが多いです。家具なども、簡単に壊れないしっかりとした作りのものを選びましょう。
汎用性
一つのアイテムが複数の用途に使えると、持ち物を減らすことができ、非常時に便利です。例えば、大きい風呂敷は、物を運ぶだけでなく、防寒、目隠し、三角巾の代わりにもなります。蓋付きのバケツは、水の運搬、洗濯、ゴミ箱、椅子の代わりなど多目的に使えます。ラップやポリ袋もその代表例です。
携帯性
特に避難が必要になった場合を想定し、持ち運びやすいかどうかも重要なポイントです。重すぎないか、コンパクトに収納できるか、リュックに入るかなどを確認しましょう。
安全性
非常時には、普段とは異なる環境下で使用することになります。火を使わないLEDランタン、操作が簡単なラジオ、子どもや高齢者でも安全に使える設計になっているかなどを考慮しましょう。
メンテナンスとアクセシビリティ
日常的な手入れが簡単か、電池や燃料などの消耗品が入手しやすいか、交換が簡単かも確認しておきましょう。特殊な電池が必要な機器や、専用の燃料しか使えないコンロなどは、非常時に使い続けるのが困難になる可能性があります。長期保存できるものでも、定期的な点検 (使用期限の確認など) は必要です。
フェーズフリー認証マークとは? 選択のヒント
数ある商品の中からフェーズフリーなアイテムを選ぶ際の、一つのわかりやすい目印となるのが「フェーズフリー認証マーク」です。これは、一般社団法人フェーズフリー協会が、フェーズフリーの考え方に基づいて開発された商品やサービスに対して付与している認証マークです。
フェーズフリー認証の5つの審査基準
認証の審査は、主に以下の5つの要素に基づいて行われます。
要素 | 内容 |
---|---|
常活性 | どのような状況においても利用できること |
日常性 | 日常から使えること、日常の感性に合っていること |
直感性 | 使い方、使用限界、利用限界が分かりやすいこと |
触発性 | 気づき、意識、災害に対するイメージを生むこと |
普及性 | 参加でき、広めたりできること |
これらの基準を満たした商品・サービスに、フェーズフリー認証マークが付与されます。ただし、認証マークが付いていない商品の中にも、フェーズフリーの考え方に合致する優れたアイテムは数多く存在します。認証マークはあくまで選択肢の一つとして参考にし、前述の「もしも」の視点などを踏まえて、ご自身のライフスタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
フェーズフリーで実現する、しなやかで安心な未来
フェーズフリーは、日常時と非常時という2つの状態 (フェーズ) の垣根を取り払い、普段使っているモノやサービスを、もしもの災害時にも役立てよう、というシンプルでありながら革新的な考え方です。
特別な「防災グッズ」を準備する負担感や、使わないまま無駄にしてしまう罪悪感から私たちを解放し、「いつもの暮らしの延長線上に、無理なく続けられる備え」を実現します。それは、変化の激しい現代社会を、しなやかに、そして安心して生きていくための、新しい時代の知恵と言えます。
今日から、あなたの身の回りのモノを少しだけ違う角度から見つめ、フェーズフリーな暮らしへの一歩を踏み出してみませんか。
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