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公開日:2025.11.26
リチウムイオン電池とは?正しい使い方から捨て方まで
スマートフォン、ノートパソコン、モバイルバッテリー、電気自動車 (EV) に至るまで、私たちの現代生活は「リチウムイオン電池」なしには成り立たないと言っても過言ではありません。しかしその一方で、リチウムイオン電池の不適切な取り扱いによる発火事故が、ごみ収集車やリサイクル施設、そして家庭内で後を絶ちません。
なぜリチウムイオン電池は便利で、そして同時に危険なのでしょうか? この記事では、リチウムイオン電池の基本的な仕組みから、安全に使い続けるための正しい使い方、そして安全な捨て方まで解説していきます。
目次:
リチウムイオン電池とは
まずは、リチウムイオン電池がどのようなものなのか、その基本を見ていきましょう。
ボタンをクリックして、リチウムイオン電池の充放電の仕組みを確認してください。
放電:電気を使っている状態です。
充電:コンセントなどから電気を貯めている状態です。
リチウムイオン電池は、一言で言えば「リチウムイオンが正極と負極の間を行き来することで充放電する電池」です。 電池の内部は、主に以下の4つの要素で構成されています。
正極 (プラス極)
正極の集電体にアルミ箔を使用し、三元系やリン酸系の正極活物質が使われます。
負極 (マイナス極)
負極の集電体に銅箔を使用し、黒鉛(グラファイト)等の負極活物質が使われます。
電解液
リチウムイオンが移動するための「道」となる液体です。
セパレーター (絶縁膜)
正極と負極が直接触れてショートするのを防ぐための、微細な穴が開いた仕切り膜。
仕組み
充電器につなぐと、外部からの電気エネルギーによって、正極にあったリチウムイオン (Li+) が電解液を介して負極へと移動し、負極活物質に蓄えられます。 機器の電源を入れると、今度は逆に、負極に蓄えられていたリチウムイオンが正極へと移動します。この時、電子が外部の回路を通って移動することで電気が流れ、機器が作動します。
わかりやすく例えると
リチウムイオン電池の仕組みは、「2つのカゴの間でボールを出し入れする」様子をイメージすると分かりやすくなります。
-
リチウムイオン = 「ボール」
-
正極と負極 = ボールを入れる「2つのカゴ」
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電解液 = ボールが転がる「床」
-
セパレーター = カゴ同士がぶつからないようにする「仕切りのフェンス」
充電するとき(エネルギーを貯める)
「正極のカゴ」に入っているボールを、電気の力を使って無理やり「負極のカゴ」へと移動させます。ボールが負極側にパンパンに詰まった状態が「満充電」です。
使うとき(電気が流れる)
負極に詰め込まれたボールは、「元のカゴ(正極)に戻りたい!」という性質を持っています。この「戻ろうとする勢い」を利用して、ボールが正極へ移動する際にエネルギーが発生し、スマートフォンや家電が動きます。
なぜここまで普及したのか?
高エネルギー密度
これが最大の強みです。小型・軽量でありながら、大容量の電力を蓄えることができます。スマートフォンやノートPCの薄型化・軽量化は、この特性のおかげです。
高電圧
一般的なニッケル水素電池などの二次電池が約1.2Vであるのに対し、リチウムイオン電池はより高い電圧を取り出せます。 例えば、主流の三元系(NMC)リチウムイオン電池では、1セル(電池の最小単位)あたり3.6V程度の電圧を実現していますこれにより、少ないセル数でも大きな出力を得ることが可能です。
メモリー効果がない
ニカド電池などは、ある程度の充電容量を残した(完全放電する前の)状態で「継ぎ足し充電」を繰り返すと、充電残量を使い切る(完全放電する)前に電圧の一時的な低下が見られ放電ができなくなる「メモリー効果」がありました。リチウムイオン電池にはこれがほとんどないため、好きなタイミングで充電できます。
自己放電が少ない
使わずに放置しておいても、蓄えられた電気が自然に減っていく「自己放電」の割合が、他の電池に比べて非常に少ないです。
リチウムイオン電池が使用されている製品
今では、リチウムイオン電池はあらゆる分野で活用されています。

引用:広報ツール - リチウム蓄電池関係 | 環境再生・資源循環 | 環境省
判別方法
お使いの機器の電池がリチウムイオン電池かどうかを判別するには、製品本体やパッケージ、取扱説明書に記載されている「仕様」を確認するのが最も確実です。
「リチウムイオン電池」「Li-ion」「Lithium-ion」といった表記や、 リサイクルマーク (スリーアローマークの中に「Li-ion」と書かれたマーク) が目印となります。

リチウムイオン電池の正しい使い方
リチウムイオン電池は消耗品ですが、使い方次第でその寿命を延ばし、安全性を高めることができます。「繊細な高性能バッテリー」であることを意識して、以下の点を守りましょう。
充電編
リチウムイオン電池が最も負荷がかかるのが、「満タン 」と「空っぽ 」の状態です。
推奨する使い方
「20%〜80%」のサイクル
バッテリーの劣化を最も抑えられる理想的な充電レベルは、20%~80%の範囲で運用することだと言われています。
実践のヒント
100%まで充電しても構いませんが、満充電になったら早めにケーブルを抜くことを意識しましょう。また、最近のスマートフォンやPCには、充電を80%や85%で止める「バッテリー保護機能」が搭載されていることが多いので、ぜひ活用してください。
やってはいけない
「100%」での放置
満充電になっても充電ケーブルを挿しっぱなしにして、電気を供給し続ける状態を「過充電」と呼びます。 これを行うと、バッテリーは常に高い電圧にさらされ、内部の材料が劣化しやすくなります。特に「寝る前に充電し、朝まで挿しっぱなし」にする行為は、長時間にわたる過充電となり、バッテリーにとって大きな負担です。
「0%」での放置
充電が0%のまま長期間放置されると、「過放電」という状態になります。電圧が下がりすぎると、電池内部の構造が損傷し、二度と充電できなくなる原因となります。
保管編
リチウムイオン電池は「熱」と「物理的なダメージ」に極めて弱いです。
推奨する保管方法
涼しく乾燥した場所で
直射日光や高温多湿を避け、風通しの良い常温 (5℃~35℃程度が目安) の場所で保管してください。
充電量は50%程度で
長期間 (数ヶ月以上) 使用しない場合は、バッテリーを「満充電」や「0%」の状態ではなく、50%程度の充電量にしてから電源を切って保管するのが最も劣化を抑えられます。
定期的なメンテナンス
長期保管中でも、半年に一度程度は取り出して状態 (膨張などがないか) を確認し、充電量が減りすぎていれば50%程度まで再充電することをおすすめします。
やってはいけない
高温環境での保管
リチウムイオン電池の化学反応は温度に敏感です。特に夏場の車内、直射日光が当たるダッシュボード、暖房器具のそばなどは絶対にNGです。高温は劣化を早めるだけでなく、後述する「熱暴走」による発火リスクを急激に高めます。
水気がある場所での使用
モバイルバッテリーは精密機器のため水気は禁物です。本体を水濡れさせないためにも、水気の近くや高湿度の環境での使用や保管は避けてください。
強い衝撃・圧力
バッテリーを落とす、踏む、曲げるなどの行為は、内部のセパレーターを損傷させ、内部ショートを引き起こす可能性があります。非常に危険です。
「ながら充電」による発熱
「充電しながら高負荷のゲームをする」「充電しながら動画編集をする」といった行為は、充電による発熱と機器の処理による発熱が重なり、バッテリーを高温状態にします。可能な限り避けましょう。
劣化・危険のサインを見逃さない
リチウムイオン電池の事故
リチウムイオン電池の事故で最も恐ろしいのが「事故」です。なぜ、どのようにして起こるのでしょうか。
発火の主な原因
事故は、主に「内部ショート(短絡)」によって引き起こされます。正極と負極が、何らかの原因で直接接触してしまうと、そこに一気に大電流が流れ、急激に発熱します。
外部からの衝撃・圧力
スマートフォンを落とす、モバイルバッテリーを踏みつける、カバンの中で強い圧力がかかる、ポケットに入れたまま座るなどの行為がこれにあたります。強い物理的ダメージが加わると、内部の正極と負極を隔てているセパレーター が破損することがあります。セパレーターが破れると、正極と負極が直接触れ合い、内部ショートが発生して一気に発熱・発火に至ります。
高温環境
リチウムイオン電池は熱に非常に弱いです。真夏の車内や暖房器具のそばなど、極端な高温環境にさらされると、内部の化学反応が不安定になり、制御できなくなる「熱暴走」を引き起こすことがあります。また、高温によってセパレーター自体が溶けたり縮んだりして絶縁性能を失い、結果として内部ショートにつながるケースもあります。
もしも発火したら?
万が一発火し、煙や炎が激しく噴き出している場合は、決して近づかないでください。 モバイルバッテリーのような小型製品であれば、火花が落ち着いた段階で大量の水をかけ、消火・冷却を行います。その後、可能な限り本体を水に沈めた状態で消防へ連絡してください。 もし少しでも危険を感じたり、対処が難しいと判断した場合は、自身の安全確保を最優先し、直ちに119番通報を行ってください。
参照:モバイルバッテリー「8.異常・発火時はどうする?」 | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構
ごみ収集車やごみ処理施設での火災事故も

環境省提供資料より:廃棄物処理施設での発火事故 (写真提供:新潟市)
家庭内での事故だけでなく、リチウムイオン電池が「一般ごみ」や「不燃ごみ」に混入されたことが原因で、ごみ収集車やリサイクル施設が火災になる事故が全国で深刻な問題となっています。
ごみ収集車はごみを圧縮しながら回収し、処理施設ではごみを破砕・選別します。この圧縮や破砕の過程で、混入したリチウムイオン電池に強い圧力や衝撃が加わり、発火する可能性があります。
作業員の方の安全を脅かすだけでなく、社会インフラに甚大な被害を与えてしまいます。自分からは見えない場所での危険を防ぐためにも、次の「正しい捨て方」を必ず守ってください。
リチウムイオン電池の捨て方
リチウムイオン電池の事故で最も恐ろしいのが「事故」です。なぜ、どのようにして起こるのでしょうか。
まずは自治体のルールを確認
リチウムイオン電池が搭載されている製品の処分を検討する際、まずは自治体のルールを確認しましょう。自治体によってルールは大きく異なり、戸別回収を行っている地域もあれば、特定の施設や協力店への 持ち込みを指定している地域もあります。
また、回収に出す際のルール (例: 金属端子部のみテープ等で絶縁する) も指定されている場合がありますので、必ず各自治体の公式ホームページを確認して下さい。
東京都墨田区の場合 (2025年11月23日現在)
区の施設に設置している回収ボックスで、小型充電式電池等 (リチウム蓄電池、モバイルバッテリーなど ) の回収を行っています。
出典:拠点回収 (乾電池・コイン電池、小型充電式電池、小型家電、廃食油、ハブラシ、ペットボトルキャップ、使い捨てコンタクトレンズ空ケース ) 墨田区公式ウェブサイト
東京都豊島区の場合 (2025年11月23日現在)
電気店やスーパーマーケットなどの「リサイクル協力店」へ
小型充電式電池は取り外し、ビニールテープなどで端子部を絶縁して電気店やスーパーマーケットなどの「リサイクル協力店」へお持ちください。
※モバイルバッテリーは本体回収のため、分解しないでください
出典:リチウム蓄電池などの小型充電式電池はごみ・資源として出さないでください|豊島区公式ホームページ
東京都品川区の場合 (2025年11月23日現在)
リチウム蓄電池などの充電式電池や充電式電池を含む小型家電は、月2回の〈陶器・ガラス・金属ごみの日〉に別袋に「充電池」と表記の上お出しください。
・清掃事務所や拠点回収での回収も引き続き実施します。
・膨張したモバイルバッテリーも収集します。
・充電式電池をごみとして出す際には、ほかのごみと一緒にせず、分別の徹底にご協力ください。
出典:不用となった二次電池 (充電式電池 ) の各戸収集を開始|品川区
捨てる際の注意点
リチウムイオン電池の廃棄は、安全確保が最優先です。不適切な捨て方は、ごみ収集作業員やリサイクル施設の作業員を危険にさらし、大規模な火災事故を引き起こす可能性があります。以下の点を必ず守ってください。
無理に外さない
スマートフォン、モバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホンなど、多くの製品はバッテリーが簡単に取り外せない構造 (内蔵型) になっています。
工具などを使って無理にこじ開けたり、分解しようとしたりする行為は絶対にやめてください。
内蔵されているバッテリーパックに工具の先端が刺さったり、傷がついたりすると、そこで内部ショートが発生し、激しく発火・爆発する危険性があります。バッテリーが内蔵された製品は、分解せずに「小型家電」としてそのまま回収ボックスに出してください。
他の廃棄物と混ぜない
リチウムイオン電池やそれを含む小型家電を、一般ごみ (可燃ごみ・不燃ごみ) や、他の資源ごみ (缶・びん・ペットボトル) と絶対に混ぜないでください。
これが、全国のごみ収集車や処理施設で火災が多発している最大の原因です。他のごみと混ざったリチウムイオン電池は、収集や処理の過程で圧縮・破砕され、強い圧力がかかって発火します。必ず定められた分別ルールに従ってください。
濡らさない
リチウムイオン電池は水濡れに弱い精密機器です。端子部分が濡れるとショート (短絡) して発火の原因となるほか、内部に水が浸入すると回路が故障したり、化学反応が不安定になったりする可能性があります。
廃棄するために一時的に保管する際は、水のかからない乾燥した場所を選んでください。回収ボックスに出す際も、雨などで濡れないよう注意しましょう。
電池の端子部分を露出させない
取り外した電池パックや、モバイルバッテリーのUSBポートなど、金属の端子部分がむき出しになった状態で廃棄しないでください。
廃棄物の集積場所や輸送中に、他の電池の端子、金属片、飲料のアルミ箔 (内側) などに触れると、そこでショートが起こり、発火に繋がる可能性があります。
「絶縁処理」として、必ずビニールテープや絶縁テープで端子部分 (金属が露出している穴や面) をしっかりと覆い、電気が流れない状態にしてください。
リチウムイオン電池が膨張している場合の捨て方
バッテリーが膨らんでいる (膨張している) ことに気づいたら、それは内部で異常なガスが発生している非常に危険なサインです。
膨張したバッテリーは、わずかな衝撃や温度変化でも発火・破裂するリスクが極めて高い状態です。
家電量販店などのリサイクルボックス (JBRC) や、自治体の小型家電回収ボックスには絶対に入れないでください。輸送中や保管中に事故を起こす危険があります。
直ちに使用を中止し、燃えやすいものから遠ざけ、金属製の缶に入れるなどして安全な場所に隔離してください。
その上で、お住まいの市区町村の清掃事務所や資源循環局、または購入店や製造メーカーに「膨張したリチウムイオン電池がある」と具体的に伝え、安全な引き取り方法を相談してください。

Ankerのモバイルバッテリー下取り回収
Ankerグループは、常設直営店「Anker Store」を展開しています。Anker Storeでは過去に購入されたAnkerのモバイルバッテリー (※) の回収を行う「モバイルバッテリー下取り&買い替えサポート」を実施しています。故障しているものや箱、付属品がなくても引き取りが可能です。特典としてお持ち込みの当日に限りお持ち込みいただいた店舗でモバイルバッテリーを税込価格より300円オフでお買い求めいただけるクーポンを配布しています。
※他社製品は引き取り対象外です
まとめ
リチウムイオン電池は、私たちの生活を豊かにする「エネルギーの缶詰」です。しかし、その高いエネルギーは、使い方や捨て方を誤れば「火種」にも変わります。
-
使う時は「高温」「水気」「衝撃」「過充電・過放電」を避ける。
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捨てる時は「絶縁処理」を必ず行い、「一般ごみ」には絶対に入れず、自治体のルールに沿って処分する。
正しい知識を持つことが、あなた自身、そしてごみ収集やリサイクル作業に携わる人々の安全を守ることに直結します。便利な技術を正しく理解し、安全に活用していきましょう。
この記事が、リチウムイオン電池とのより良い付き合い方の一助となれば幸いです
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